「ありがとうございます。少しだけ心の整理ができました。あとはわたし自身で、あれこれ考えてみます」


 少なくともマリア本人はやる気なんだし。
 わたしが考えたところでどうしようもないんだけど、モヤモヤしたまま過ごすより、きちんと自分を納得させたほうが良いんだろうなぁと思う。
 だって、わたしが迷ってばかりいたら、マリアに要らぬ不安を抱かせてしまうだろうから。


「役に立てたなら良かったです。
それはそうとジャンヌ、今度の休みに街に出かけてみませんか?」

「え? 街に、ですか?」


 これはまた随分唐突なお誘いだ。脈略がなさすぎて、思わず首を傾げてしまう。


「ええ。せっかく王都に来たのに、ジャンヌはほとんど神殿にこもっているでしょう?」

「……いや、忙しくさせた張本人がよく言いますね」


 森に居たときはともかく、王都に来て以降の引きこもりについては、元はといえばセドリックのせいだ。だって、彼がわたしを神官として参拝客の前に引きずり出したのが原因だもの。
 ねぼすけなわたしが毎朝6時に起きて、そこから昼まで息付く間もないほど忙しくて。以降も神殿でなんやかんやしているから、外に出る気力なんて残るはずがない。神殿に引きこもるのも当然なのである。

 だけど、わたしの嫌味もなんのその。セドリックはヘラヘラ笑いながら、わたしの頭をそっと撫でた。


「普段しっかりと頑張っていますから、少し休んだところでバチは当たりません。私と一緒に、ゆっくりしましょう。せっかく恋人同士になれたのですし」


 その瞬間、唐突にもたらされた甘い雰囲気に、わたしはウッと口を噤む。
 セドリックはわたしの頬に唇を寄せ、甘えるように――――甘やかすようにキスをした。