「これでも神殿の稼ぎ頭なんですがねぇ……」

「稼ぎ頭?」


 神に仕えている身の癖に『稼ぐ』とは何事だ。大体神官って言うのは国に雇われている公務員でしょう? 公務員って言うのは市民全体の奉仕者として、金稼ぎなんて考えちゃいけないって相場が決まっているでしょうに。
 眉間に皺を寄せれば、彼はふふ、と微笑んだ。


「一日に二十万ウェル」

「……はあ?」

「毎朝ね、神殿で人々のお祈り、願い事を聞くのですよ。まあ、どの神官を選ぶかは任意ですし、神殿ですから当然、無料でお祈りは可能です。
だけど、私が微笑むだけで、乙女たちが金品を恵んでくれるわけですよ。『神殿のためにどうぞお役立てください』ってね。まあ、自分で自由にできるお金じゃありませんけど」

「ああ、さいですか……」


 なるほど。この男をアイドルみたいだと感じたのは、どうやら間違っていなかったらしい。
 やっていることは前世でいう『会いに行けるアイドル』そのもの。娯楽に飢えた現代の乙女たちは、こぞってこの暑苦しい男に会いに行っているらしい。