「――――私はこれでも君の父親だからね。親というのはいくつになっても子供のことが心配だし、誰よりも大事に思っているし、幸せになって欲しいと心から願うものなんだよ。たとえおせっかいだとしてもね」


 お父さんはそう言って、わたしの頭をそっと撫でた。
 これまで必死になって避けていたけど、何でだろう。今なら父の気持ちも、少しだけ分かる気がする。


「今まで大して父親らしいことができなくて、申し訳なかったね。けれど、ジャンヌがあの家から飛び出して、こうして楽しそうに生活しているのを知ることができて、私は今、本当に嬉しいんだ」

「……別に、父親らしいことを拒否してきたのはわたしの方だし。お父さんが気にする必要はないんだけど」


 我ながら本当に素直じゃない。
 だけど、お父さんは嬉しそうに笑いながら、わたしをギュッと抱きしめてくれた。


「たまには私にも手紙を書いておくれ。困ったことがあったら、いつでも力になるからね」

「……うん、ありがとう」


 ぶっきら棒に返事をする。
 そんなわたしのことをセドリックとマリアが微笑みながら見つめていた。