「うん! あのね、マリア聖女頑張ってるの! 怪我とか風邪ぐらいなら治せるようになったし、お腹ペコペコなのも治せるんだよ」

「へーー、すごいね! そんなことができるんだ」


 ほんの二ヶ月前まで普通の女の子だったマリアは今や、いろんな技術を身につけている。
 治癒能力をはじめとし、結界を張ったり、飢えを満たしたり……といった能力だ。

 現世は魔女として生まれてきたわたしにも、そんな芸当はできない。マリアだけに与えられた特別な能力である。


(でもなぁ)


 果たしてマリアは、本当に聖女として存在すべきなのだろうか。

 というのも、マリアが授かった能力っていうのは、時間やお金、頭を使えば、いくらでも叶えられるものだからだ。


 だって、そうでしょう?

 前世では医者に、看護師、薬剤師がいて。それから、医療や薬学を研究している人がいて。
 長い時間と努力の果てに得られた知識と技術、それから思いやりで、人々を救っていたんだもの。マリアが一人で頑張る必要なんてありゃしない。