お祈りの時間が終わり、急いで自室に戻ったら、父は優雅にお茶を楽しんでいた。


「おじいちゃん、ただいま!」

「マリアちゃん、おかえり! 待っていたよ!」


 二人は本当の爺孫のように、ギュッと互いを抱きしめ合う。傍から見たら微笑ましい場面で、侍女や神官たちも嬉しそうに眺めているけど、わたしの心は複雑だった。


(おじいちゃん、か)


 わたしはマリアに『お母さん』と呼ばせたことはない。
 血の繋がりがないし、わたしはあの子を拾っただけで、大したことをしていないからだ。

 それなのに、わたしの父親というだけで、あの二人は全く違和感なく祖父と孫として存在している。

 これまでは何とも思わなかったのに、何でだろう? 
 とても気にかかってしまうのだ。


「あんなに小さかったマリアちゃんが聖女になったのかぁ。すごいねぇ」


 まるで、目の中に入れても痛くないといった様子で、父がマリアの頭を撫でる。
 マリアはマリアで父の膝の上に座り、ガッツリ甘えまくっていた。