「そうか、そうか。事情がわかって、少しだけホッとしたよ。君が大変な目にあっているのに、何も知らずにいたのかもしれないと、不安に思っていたんだ」


 ポンと優しく頭を撫でられ、わたしは思わず唇を尖らせた。


「なにそれ? わたしって、そんなに信用ないの?」


 もう二十二歳なんですけど。
 前世で換算すれば、大学を卒業して社会人になって、親元から離れている年頃ですけど。もしかして、あまり会っていないせいで、小学生みたいに思われているんだろうか?


「いや、ジャンヌはよく頑張ってるよ。早くに母さんを亡くして、寂しかっただろうに、泣き言一つ言わなかったからね。
けれど、時々妙に強がっているように見えるというか、人に頼ったり、甘えることが下手なのが気になってね」

「…………そう、かな?」


 そんなことない――――とはとても言えない。
 前世で元婚約者から『お前なら大丈夫だろう?』って言われて以降、強くならなきゃいけない、誰にも頼っちゃいけないって自分に言い聞かせて生きてきたから。