「最近様子を見に行く時間が取れなくてすまなかったね。まさか、王都に移り住んでいるとは、夢にも思わなかったんだよ」

「いや別に。わたし、もういい大人だし。親に面倒をみてもらうような年齢じゃないんだから」


 あと、ちゃん付けで呼ぶのはいい加減に止めてほしい。ガラじゃないし。周りの神官たちも気になるみたいで、こっちをチラチラ見ているから。っていうか、普通に恥ずかしいから。


「そんな悲しいことを言わないでくれ! 私がどれほど君のことを心配していたか、ジャンヌちゃんなら知っているだろう?」

「そりゃあ知ってるけど」


 父と母は結婚こそしなかったものの、深く愛し合っていた。そして、二人の娘であるわたしもまた、彼に溺愛されていた。

 家や土地を用意してくれたのも父で、これまで周囲からの干渉を受けずに済んでいたのも、あの辺一帯が伯爵の持ち物だからという事情があったりする。
 それだけしっかりと恩恵を受けていたんだもの。もう十分。これ以上面倒をかけなようにって思うのは当然でしょう?