「セドリック」


 自分を変えること、踏み出すことはやっぱり怖い。
 失敗したくないし、傷つきたくないし、できない自分にガッカリしたくないから。

 だけどそれでも、ほんの少しだけ勇気を出して、わたしは神官様――――セドリックに向かって手を伸ばす。


 セドリックは微笑みながら、わたしの頬に、唇に、触れるだけのキスをした。
 くすぐったくて身を捩ると、ギュッと強く抱きしめられて、そのまま深く口付けられる。


(うん――――悪くない)


 人とは少し違うかもしれない。
 だけど、こんな恋愛の形があっても良いのかもしれない。

 とても嬉しそうなセドリックの笑顔を見ながら、わたしは瞳を細めるのだった。