「さあさあ、マリア様がお待ちかねですよ? 夜ご飯はカレーを作ってくださるのでしょう?」

「……っ! だから、今から帰るところだったって言ってるじゃありませんか!」

「ならば、早くこの扉を開けてください? 私にあなたを抱きしめさせて?」

「お断りします!」


 昨日の湿っぽい雰囲気よりはマシだけど、こういう意地の悪いやり取りも嫌いだ。
 実際のところ、神官様が何を考えているのか、ちっとも分からないから。


「私は本気ですよ」


 だけどその時、神官様は思わぬことを口にした。すぐに言い返そうとして、思い直して唾を飲む。


(本気って……なにが?)


 本当は、そう尋ねようと思った。だけど、やぶ蛇になりそうで、すんでのところで止めた。

 聞きたい。
 聞きたくない。
 相反する想いが、胸の中で蠢いているから。