「どうしてここに居るんですか? わたし、今から神殿に帰るところだったのに」


 散々悩んだ挙げ句、わたしはそんなことを口にした。

 今から神殿に向かおうとしていたのは事実だし。我ながらガキっぽいけど、憎まれ口を叩いてないとやってられないもの。


「当然ですよ。朝起きたら、ジャンヌが居なくなっていたのですから。
きっと恥ずかしさに耐えかねて逃げたのだろうと。ならば極限まで恥ずかしがらせてあげようと思いまして」

「なっ!」


 なんていう性格の悪さ!
 わたしは思わず言葉を失ってしまった。


「私は貴女を逃がすつもりは有りません。ジャンヌがなかったことにしようとしているアレコレを、ここでしっかりと、確かなものにしたいと思っています。
事実、こうして私が迎えに来たことで、貴女の心は揺らいだでしょう? 私に顔を見せられない――――上手く誤魔化せないほどに」


 扉の向こう側で、神官様が微笑んだ気配がする。
 わたしの考えを分かっている癖に、こうも正反対の動きをするんだもの。ホント、最高に性格が悪い。そんなこと、こっちはちっとも望んでいないのに。