(なんで? どうして神官様がここに居るの?)


 ――――いや、本人が『迎えに来た』って言ってるんだけど! それにしたって、意味がわからない。

 今はちょうど、お昼の鐘が鳴った頃。
 神殿からこの家まで、どのくらい掛かるかは知らないけど、朝イチ――――なんなら日が昇らぬうちから神殿を出なきゃ、ここには辿り着けないはずだ。


「早くここを開けてください?」


 神官様の声が聞こえる。扉にピッタリ張り付いているのか、やたらめったら声が近い。同じく扉に張り付いていたわたしは、ビクッと反応してしまった。


(ダメだ。イケると思ったのに)


 無理そう。
 心臓が暴れまわって、全然だめっぽい。

 だって、神殿に帰ればマリアをはじめ、色んな人が居るし。めったに二人きりになる機会がないから、大丈夫だって思ったんだもん。ていうか、ここまで迎えに来るなんて想像もしていなかったし。