(よし、寝よう)


 寝たら大抵のことは解決する。勝手に時間が経ってくれるし、嫌なことや、目を背けたくなるような現実を忘れさせてくれる。ここなら誰にも邪魔もされないし。

 シーツにボフッと顔を埋めると、神殿のベッドとは違い、自分の匂いが濃く香った。ベッドサイドはごちゃごちゃと色んなものが置かれていて、帰ってきたっていう感じがする。
 
 目を瞑って、深呼吸を一つ。何も考えないよう、頭の中を空っぽにする。

 だけど、何でだろう? 不思議なことに睡魔が中々降りてきてくれない。


(あんなに寝坊したかったのに)


 神殿で暮らすようになってから、一日の睡眠時間が3〜4時間は短くなった。絶対に、寝不足だって……いくらでも寝れるって思っていたはずなのに。

 わたし今、まったく眠くない。


(どうしよう……)


 わたし、この家で一人、何をしていたんだっけ?

 家事も嫌いで、食事に対しても無頓着で。
 時々、前世で便利だった家電もどきを自作していたけれど、本当に気が向いたときだけだったし。