「貴女が私の行動を迷惑だと思っていることは、きちんと分かっていました。それでも私は、貴女を一人にしたくなかった。
ジャンヌ殿を笑わせたかったし、素直な気持ちを聞きたかった。生きることに希望を見出してほしくて、毎日を楽しいと思ってほしくて――――そうこうしているうちに、私のほうが楽しくなっていました。心から笑えるようになっていました。次はどんなことを話そうかと考えるだけで楽しくて、明日が来るのが待ち遠しくて」


 神官様が微笑む。穏やかで優しい、温かい表情で。

 はじめて神官様の笑顔を見た時、暑苦しい、胡散臭いって思った。
 それは多分、彼が心から笑っていないって薄々感じ取っていたからなのだろう。

 あの時と今じゃ、神官様の表情は全く違う。
 今の彼の言葉には、嘘も偽りも存在しない。

 それぐらいは分かっている。
 分かっているのだけど――――


 わたしには無理だと、そう口にしようとして、言葉ごと唇を塞がれてしまった。

 流されちゃいけないって思っているのに、唇が、指先が、身体が言うことを聞かない。


「ジャンヌ――――」


 口づけの合間に名前を呼ばれ、身体がビックリするほど熱くなる。神官様の瞳を見たらおかしくなりそうで、わたしは必死に目を瞑った。
 だけど、見なくても分かるほど、彼の眼差しは熱くて、強い。


(今夜だけ)


 自分にそう言い訳をしながら、神官様の口づけを受け入れる。

 息をするのも忘れて。
 唇が腫れてしまうほどに。

 わたしはひたすら、神官様の情熱を受け入れた。