神官様はわたしをバルコニーに連れ出した。
 神殿の人間しか立ち入れない場所。おそらく誰も来ないだろう。

 さっきまで賑やかな場所に居たせいか、静寂が妙に際立って感じる。ソワソワとして、とても落ち着かない。


(こういう雰囲気は苦手だ)


 咳払いを一つ、わたしは無理矢理話題を切り出した。


「神官様、あの……やっぱり会場に戻りません? よく考えたら、そろそろマリアを部屋に返さないと。もう遅いし、疲れただろうから」


 元々マリアのことは、頃合いを見て部屋に帰すつもりだった。ダンスも終わったことだし、退出したところで誰も文句は言わないだろう。
 もちろん、私の一番の目的は、それを口実にこの場を去ることだけれど。


「ああ、その点はどうぞご心配なく。先程護衛騎士に、頃合いを見計らってマリア様を会場から連れ出すよう、指示を出しておきましたから。私達が会場を出たタイミングで、マリア様もお部屋に戻られている筈です」

「はぁ……!?」


 なにそれって言い返そうとして、わたしはグッと言葉を飲み込んだ。