「はじめて?」

「ええ。下手に誘って勘違いされたら困りますし、夜会やダンスって正直『くだらない』『どうでも良い』って思ってたんですよね」

「……なるほど」


 いけない。こんな時なのに、神官様にシンパシーを感じてしまう。


(そうか。神官様は元々、そういう考え方をする人だったのか)


 わたしが言うのもなんだけど、結構スレてるというか。
 分かる、と思ってしまった。


「……だったら今回も、踊るの止めときません?」

「ダメです」


 神官様がニコリと微笑む。
 周囲にはダンスを楽しんでいる貴族たち。
 神官様はわたしのことを見つめながら、指先に触れるだけのキスを落とした。


「私に合わせて」


 肩を抱かれ、音楽に合わせ、緩やかに身体が動き出す。

 前世、テレビで見た社交ダンスの足運びを思い出しながら、それっぽく見えるようわたしは身体を動かした。足元はドレスのおかげで見えないし、案外踊れているように見える――――かもしれない。というか、そう願いたい。