「ジャンヌさんも踊ってくれるよね? マリアも頑張ったんだもん。たくさん人が見ている中、ちゃんと踊りきったよ?」

「う……」

「見たいなぁ、ジャンヌさんが踊ってるところ、見たいなぁ」


 あーーーーもう!
 こんなふうに言われたら、さすがのわたしも折れざるを得ない。


「ちょっとだけだからね」

「やった、やった! 良かったね、セドリック!」

「ええ! ナイスアシストです、マリア様!」


 人の気も知らないで、二人は手を取り合って喜んでいる。わたしは眉間にシワを寄せた。


「ほら、そうと決めたらサクッと踊って終わらせましょう」

「はい! ジャンヌ殿の気が変わらないうちに」


 神官様はわたしの手を取り、エスコートする。何がそんなに楽しいのか知らないけど、やけに上機嫌だ。


「いやぁ、嬉しいですねぇ」

「何がですか?」

「ダンス。こんなふうに誰かを誘ったのははじめてです」

「は?」


 そんな馬鹿な。
 参拝者からも、神殿の侍女たちからも、常にモテモテな神官様が。
 貴族の令嬢からも熱い視線を送られている神官様が。