「は?」


 いやいや、何してるの? 
 ここ、どこだか分かってる? 
 っていうか、近すぎるんですけど!

 ありとあらゆる文句を込めて、わたしは神官様を睨みつける。
 しかし、神官様は強かった。キョトンと目を丸くしてとぼけながら、ほんのわずかに首を傾げた。


「ほらほら、ジャンヌ殿。私を睨んでいる暇があるなら、早く拍手をしましょうね! マリア様を褒めてあげたいのでしょう?」


 言いながら、神官様が拍手をする。すんごく意地の悪い笑みを浮かべながら。わたしはムッと唇を尖らせた。


(そうは言っても、近すぎるんだって)


 頭上に、背中に、首筋に、神官様の熱を感じる。
 女性みたいに綺麗な顔立ちをしているくせに、目の前に見える神官様の手のひらはでっかい。
 こうも近くちゃ恥ずかしいし、色々、腹立つ。


 だけど、神官様を退かすより先に、今はマリアに拍手を送るべきだ。
 必死で拍手をしていたら、マリアが満面の笑みを浮かべ、わたし達の方に駆け寄ってきた。