神官は興奮した面持ちで、我が家をうろうろと物色し始めた。


「早く神殿に帰ってください。マリアがお腹を空かせて待ってるんでしょう?」

「……分かっております。分かっておりますが、知的好奇心には抗い難い」


 瞳を輝かせるその様は、幼いマリアよりも余程子どものようだ。真面目なようで不真面目な男。非情なわたしでも、マリアが可哀そうになって来た。ため息を吐きつつ、家の中を物色する男を睨みつける。


「神官様――――」
「セドリックです」


 ニコリと、男は爽やかな笑みを浮かべる。爽やか――――いや、よく見たら太陽みたいに暑苦しい笑みだ。顔が良いから分かりづらいけど、案外ねちっこい印象を受ける。例えるならば、某熱血テニスプレーヤーみたいな。陰キャでやる気のないわたしとは相容れないタイプだ。


(ホント面倒だな。どうせ今日限りのお付き合いなのに)


 名前を覚えたところで意味がない。聞かなかったことにして、わたしはふいと顔を背けた。