――――神官様の生い立ちが分かった。

 だからといって、何が変わるわけでもない。

 神官様は神官様で。
 王族だからといって、対応を変えるつもりも、詳細を追及するつもりもないから。


 人混みを避けるようにして、わたしたちは料理がたくさん並べられたエリアへと向かった。食欲をそそる美味しそうな香りに、盛り付けが面倒くさそうな――――見ているだけで惚れ惚れする美しいプレートたち。
 マリアは瞳を輝かせ、くるりとわたしの方を振り返った。


「ジャンヌさん、あたしお腹空いちゃった!」

「ああ……そうだろうね。頑張ったし、良いんじゃない? 食べてきたら?」

「うん、そうする〜〜!」


 こういう場でのお料理は、殆ど手を付けられずに捨てられてしまうものらしい。社交に来ている貴族は忙しいから仕方のない部分もあるだろう。

 だけど、わたし達には知り合いが少ないし、マリアはまだ子供だし。
 そもそも食べ物を粗末にしちゃいけないからね。


(マナー違反だって後ろ指を指す人間はさすがにおらんだろう)


 給仕担当に食べたいものをオーダーしながら、マリアはとても楽しそうだ。