「もう少し良いだろう、セドリック。まだお前の近況も聞けていないことだし」

「そうよ。陛下も弟である貴方のことをいつも気にかけていらっしゃるのよ。
それに、貴方だって王族なんだから、こちら側で私達と一緒に挨拶をしてくれても良いじゃない?」


(え……?)


 国王の弟。
 王族。

 神官様が。
 あの、神官様が。

 信じられない――――っていうわけじゃなく、寧ろ色々納得というか。さっきのシャーリーとのやり取りが色々と腑に落ちてきた。


「ねえ、セドリックは王子様なの?」


 このタイミングで打ち込まれるマリアだからこそ許される質問。
 神官様は穏やかに微笑みつつ、小さく首を横に振った。


「いいえ、マリア様。今の私はあくまで神官の一人に過ぎません。私は陛下や王太子殿下とは全く異なる立ち場なのですよ」


 どこか寂しげな笑顔。
 なるほど……事情は中々に複雑なようだ。

 わたしはため息を一つ、神官様の腕を取る。


「神官様、そろそろ行きましょうか。わたしに夜会を満喫させてくれるって約束だったでしょう?」


 礼儀がなっていない若い魔女。
 わたしの評価なんてそれで良い。

 今は早くこの場から離れないと、だ。


(マリアには悪いけど……)


 そんなふうに思っていたら、マリアはとても嬉しそうな表情で、わたしと神官様の腕に飛びついてきた。

 マリアがふふっと声を上げて笑う。
 神官様が苦笑する。

 なんでだろう――――わたしもつられて笑ってしまった。