「先程はお見苦しいところをお見せしました」


 神官様はそう言って微笑む。
 いつも自信満々なくせに、今はどこか弱々しい。わたしは思わず首を横に振った。


「別に。見苦しいとは思いませんけど……悪いのはわたしの妹ですし」


 あの後、シャーリーはフラフラになりながら、会場のどこかへ消えてしまった。さすがに今夜、再チャレンジするだけの気力は残っていないだろう。寧ろ、無事に屋敷に帰れるか心配になるレベルである。


(気の毒だし、馬車に乗り込むところまでは確認してやろう)


 あっちは認めてないけど、一応わたしは、あの子の姉なんだし。変なことになったら寝覚めが悪いもんね。


「普段はもう少し上手くやれるんです。
今夜はつい……ムキになってしまいました」


 神官様はそう言って、広間の入口の方をそっと見遣った。


(ムキに、ねぇ)


 確かに、神官様はいつも飄々としていて、身分問題が逆鱗に触れるとは思ってなかったもん。まあ、時々すごい怒るし怖いけど。