(まあ、言わないし、何もしないけどね……)


 正直言って今のわたしにとってはどうでも良い。
 国を良くしたいとか、身分制度をなんとかしたいとか、そういうことは思わないもの。

 シャーリーに馬鹿にされたところで腹も立たないし。


 けれど、神官様はそうは思わなかったらしい。彼は眉間にシワを寄せ、シャーリーの前に躍り出た。


「そういう言い方は如何なものかと思いますよ、シャーリー嬢。訂正し、ジャンヌ殿にきちんと謝罪をしてください」

「なっ……」


 神官様の反応が意外だったのだろう。シャーリーは目を見開き、頬を真っ赤に染めた。


「そんな、謝罪なんて嫌です。わたくしは思ったままを申し上げただけですわ」


 如何にも不服そうな声音。わたしは思わず笑ってしまった。


(そうそう。シャーリーに悪気はない)


 元々そういう価値観の世界だし。あの子がそう思うのも普通というか。気にしたところで無駄だって分かっているもの。