ドアを開けると、そこには無駄にキラキラしたイケメンが立っていた。
 眩い金の髪に明るい緑をした瞳。王子様系アイドルって呼称がピッタリの甘いマスクの持ち主で、頭のてっぺんからつま先まで、全てが完璧。浮世離れした容姿だ。


(当然か。ここはわたしにとっての浮世じゃないし)


 ため息を吐きつつ前を見る。
 改めて見れば、イケメンは真っ白な布地に金の刺繍が見事な美しい装束に身を包んでいた。所謂神官と呼ばれる人たちが着る服だ。


「お迎えに上がりました、聖女様」


 イケメン神官がそう言って微笑む。胸焼けのしそうな笑顔だ。


「聖女? 何を馬鹿なことを。わたしは魔女だけど、聖女ではないわ」


 言い返しながらわたしは小さく鼻で笑う。
 たまたま、前世で『聖女』と呼ばれていた人と同じ名前を着けられた。だけどわたしには、浄化も出来なければ、人を癒す力も無いというのに。


「お客様?」


 ドアの隙間から、幼女がヒョコッと顔を出す。
 彼女の名はマリア。まだ六歳の小さな少女だ。


「こら、勝手に出てくるなっていつも言ってるでしょ?」

「だって~、ジャンヌさんが中々帰ってこないんだもん」


 そう言ってマリアはわたしの足にひしと抱き付く。鬱陶しい――――どれだけ表情に出しても、マリアは意に介さない。ニコニコと笑ったまま、ピタリと纏わりついている。


「聖女様!」


 その瞬間、イケメン神官が勢いよくその場に跪いた。マリアはキョトンと瞳を丸くし、呆然と目の前の男性を見下ろしている。