褒める訳でも、けなす訳でもなく
龍二は淡々とした口調で答えた。
「金目当てで寄ってくる女は、もう飽きた。
お前みたいな欲のなさそうな女の方が
良いと思ったんだ」
そりゃあブランド物に身を包み
高級車を乗り回して、外資系の会社で
背も高く、ワイルドな顔が引き締まってて
独身って聞いたら、みんな着いて行くでしょ。
「そうですか。
じゃあ宜しくお願いします」
麻耶がペコリと頭を下げると
安心したように口元を緩めた。
「腹減ったなぁ、焼き飯でもするか?」
「御飯ないですけど」
「冷凍を買ってある」
「えぇ?料理するってそういう事ですか?」
「馬~鹿!今日は何もないからだよ!
それに急に焼き飯が食いたくなった。
冷凍も美味いぞ!」
「ハハ!なんか意外な一面を見た感じです」
そうかぁ、と言って龍二も豪快に笑った。
北京鍋を、煙が出るまで焼き
本格的な冷凍焼き飯を作ってくれた。
ウマイだろ?と聞きながら
嬉しそうにレンゲを口に運ぶ。
少年のような、何て事は言わないけど
私が抱いていたイメージが
音を立てて崩れていった。