見知らぬ人に言われた言葉を

頭の中で繰り返し、ゆっくりと振り向くと

母親ほどの年齢の人が遠くに見えた。

「ありがとうございます」

麻耶は、精一杯の声で叫んだ。

その人も振り向き軽く頭を下げた。

麻耶も立ち上がり

膝におでこが付くほど頭を下げた。

教えて貰った事を

もう一度掌を合わせて誓った。

そして、いつか必ずパパと一緒に来るから

と約束した。

私は間違っていたのかもしれない。

龍二が父親である事に変わりはない。

私だけの赤ちゃんじゃないんだよね。

二人で誓わないと意味がないんだ。

待ってるよ。

龍二が出て来るのを待ってる。

二人で来ようね。

いつか必ず二人で来ようね、龍二。



     ☆     ☆     ☆



マサルから手紙が届いた。

兄貴は、遠くへ移送される。

麻耶が、会いに来るなと言ったので

出ても会いには行かないそうだ。

とだけ書いてあった。

移送先は書いてなかった。

それでも、また会えると信じてみるよ。

いつか必ず・・・会えると。