白いシーツ、緑色のカーテン。
やけに柔らかい色だと思った。

私は白いシーツのベットの上に座り、そのベットの傍では白衣を着た女の人が座っていた。

その白衣を着ている女の人は私を見て、何か観察をしているようで。


「どこか痛むところはあるかな?」


そう聞かれても痛むところは無かった。ただ頭がぼんやりとする。静かに顔を横にふれば、少し左側の頭が傷んだ。
それでも特に気にならず、顔に出ることはなくて。


「うん、じゃあ自分の名前は言える?」


名前…。
…名前、
…名前…?

頭がぼんやりとするせいか、自分の名前が思い浮かばない。


「いいえ…」

「歳は?」

「…分からないです…」

「ここがどこだか分かる?」


その質問に、部屋の中を見渡した。緑色のカーテン、白いシーツのベット。そしてベットの横には、変わった机の上にテレビが置かれてあった。



「どこかの部屋です…」

「いつここに来たか、どうやって来たかは?」

「…分かりません…」

「うん、じゃあ、今から言うことを覚えてね」

「……?」

「車、花、人。1回、言ってみて」


この人は、何を言ってるんだろう。


「くるま…、はな、ひと」

「じゃあ、ここに丸を書いて。このボールペンを青色を使ってね」


差し出された紙と、三色ボールペン。
言われた通りに三色ボールペンの青色をペン先を出して、紙に丸を書いた。


「ありがとう。じゃあ今日は何月何日かな?」

「……」

「分からない?」

「…はい」

「さっきの言葉3つ、言ってみて」

「車の、ですか?」

「そう」

「車と、花と人です」

「ありがとう。これで質問は終わります。──…何か私に聞きたいことはあるかな?」


そう言われても。
何を聞けばいいか分からない。
ここがどこか質問してきたのに、この人は答えを教えてくれないのだろうか?




「…とくにありません……」