キミは海の底に沈む【完】

〝6時20分 起床
6時50分までファイルを見る

7時30分までにすること
①制服に着替える
制服はクローゼット
ブラウス下着類もクローゼットの棚の中
②ご飯を食べる
③身支度をする
時間割の確認もする
④7時30分 学校へ行く
ウシオくんと一緒に行く〟


私の部屋の中に入れば、机の上に紙が置かれてあった。記憶のない私は、きっとこれを見て朝の時間を過ごすのだろうと思った。
今日はホテルで泊まったから、この通りにはいかなかったけど。


この〝ファイル〟ってなんだろうか?
机の上にも、部屋の中にも〝ファイル〟は無かった。


「凪、制服はクローゼットの中にあるからね」


部屋の中に来たお母さんにそう言われ、私はクローゼットを開けてみた。
確かに制服はあった。
青いチェックのスカートがハンガーにかけられていた。ブラウスはクローゼットの棚の中に入っていた。

1人になった部屋でその制服に着替えてみた。疑っていたわけじゃないけど、制服のサイズはぴったりで、本当に私の制服なんだなぁって思った。


そうしているうちに、潮くんが戻ってきた。潮くんも似たような青いチェックのズボンと、長袖のカッターシャツを着て袖をおっていた。


なんだか、私服の時と雰囲気が違った。
そんな潮くんは、玄関先で、私が家に戻ってきた時に履いていた黒いサンダルを見て、「…誰のか聞くの忘れてた」と、眉を寄せていた。





自転車の2人乗りで、学校へと向かう。前に座りペダルを漕いでくれる潮くんは、「知らない人ばっかで戸惑うと思うけど、怖がらなくていいからな」と、私を安心させてくれた。


「あと、授業の内容も分からないと思うけど、ちゃんと教えるから心配しなくていい」

「内容?」

「凪は基本的なもの以外記憶できないから」

「本当に不思議ですね、学校は授業をうけるものって分かっているのに、授業の内容を覚えていないなんて…」

「そういうもんだよ、俺だって、勉強してねぇから全く分かんねぇしな」


面白そうに笑っている潮くんは、「ちなみに小学校の時から席は隣同士」と、自慢げに言っていた。