「どうして? 今頃になって……」
 母は一体、何を企んでいるのか? もう私のことは放っておいて欲しいのに……。
「流行り病が、世界中に広まっているのはあなたもご存じでしょう?」
「はい。それが何か関係あるのでしょうか?」
「あなたのお母様は、あなたに流行り病の薬を作らせ、それで一儲けしようと考えられておられるようなのです。お母様がおっしゃるには、あなたの薬学に関する知識や技術は、あなたが聖女として教育を受けてきたからこそ、身につけられたものだと――」
「だから母は私を返せと言っているのですね」
 フィリップは無言で頷いた。 
 何と身勝手なことか……。私は空を仰いだ。
「……というのは表向きの理由です。あなたのお父様からお聞きしたところによると――」
「まだあるのですか……」
 もう聞きたくはなかったが、聞かないわけにはいかないようだ。
「ええ。あなたが国を去られてから、国民からの聖女に対する信頼が急激になくなっているのです。大変失礼な言い方ですが、あなたのお母様のお振る舞いがよろしくない。そこに来て流行り病の大流行ですから、国民の怒りの矛先が、聖女に向けられていて、いつ暴動が起きてもおかしくない状況のようです」
 国民は気の毒に思う、そして、助けてあげたいと思う。しかし、このまま母の尻ぬぐい役にさせられて良いのか……私は頭を抱えた。
「お母様の言いなりになりたくないのですね」
 フィリップは、私の心中を言い当てた。
「それでしたら、一つだけ方法があります」