結局、フィリップは回復したのだろうか?
 あれ以来、姿を見かけていない。
 だが、フィリップの身に何かあったのなら、それこそ私の耳に入ってくるはずだ。
 ただ単に、他所での仕事が忙しくて、来れないだけなのかも知れない。
 そうだ、そうに決まっている。


 相変わらずフィリップの消息は掴めなかった。そんな時だった。
 私の元に、国王陛下の使者を名乗る者が訪れた。
 用件を聞くと、国王陛下が直々に私に会いたがっているとのことだった。
 どうして私に会いたいのかを聞いても、使者は、ただ、『国王陛下が会いたがっている』としか答えてくれなかった。
 国王陛下が私に会いたがっている理由がわからなかった。
 理由があるとしたら、一つだけ――私が隣国を追放された元次期聖女だったということだけだ。


 結局、私は国王陛下に謁見することにした。
 詳細がわからない以上、無事に戻って来られるかどうかはわからない。
 そこで、私は、出発する前日まで可能な限り、咳止めの薬を作った。
 もしもの時のため、薬のレシピもメアリに渡しておいた。私以外の人間が、このレシピの通りに再現するのは大変困難であるとわかっている。
 それでもいつか誰かが、再現してくれることを願った。


 ――そして、出発の朝がやってきた。