薬を作り終えた私は、荷物をまとめ始めた。
 今更ながら、父との約束を実行することになる。
 ――先ほど作り終えたばかりの薬、今まで書き溜めた薬のレシピ、そして、父と別れるときに渡された紙切れ……。
 全てひとまとめにしても、片手で持てるくらいの量しかない。その荷物を私は、離れの外に隠した。
 だが、薬のレシピと堕胎薬だけは、肌身離さず洋服の下に隠し持っておくことにした。
 こんなに小さな荷物をまとめるだけで、結構な時間を費やしてしまった。
 でも、これで、いつでもここを出て行くことができる準備が整った。


 私が準備を終えて一息つく間もなく、私は母からの呼び出しを受けた。しかも至急の用事だそうだ。
 未だかつて私は、母から急な呼び出しを受けたことはなかった。
 母が私を呼び出す理由――それは、昨晩のことに違いない。
 しかし、愚かな私は、この期に及んでも、母に対して一縷の望みを抱いていたのである。
 ――いくら母でも、実の娘の私に対して、あんな酷いことができるだろうかと。


 私が母に指定された場所に行くと、その場には母だけではなく、カタリナと国の要職に就く全ての者たちが揃っていた。
 この状況を見て、私が母に寄せていた期待は、見事に裏切られることとなった。