「さ、もういいでしょう。あなたももうお戻りになられた方がよろしいですよ」
 私の手からカタリナの課題を取り上げると、講師はさっさとこの場を去ってしまった。
 今回の課題を仕上げるにあたり、私は古今東西の様々な文献を調べた――有名なものからそうでないものまで。
 その中で、カタリナの課題にそっくりなものを見たのだ。
 おそらく、母が、誰かを使って、カタリナの代わりに課題をやらせたのであろう――カタリナには盗作をするという知恵もないだろうから。
 そして、母は他のことでも私を貶め、カタリナを持ち上げることをやめないだろう。
 今後私がどんなに努力しても、カタリナに勝てる見込みはないことは確実にわかった。


(今日も来ていないのかしら……?)
 私は離れに帰り着くなり、建物の外を一周した。
 毎日のようにメアリが離れに来て掃除をしてくれていたのだが、ここ何日かは、メアリが来た気配がないのだ。
 メアリは、あくまで厚意でやってくれている。本来の自分の仕事が忙しくて、ここに来ることができなかっただけなのかも知れない。
 私のところに来ていることが知られてしまって、メアリが酷い扱いを受けていなければよいが……。
 あと数日様子を見て、もしメアリが来なければ、探りを入れてみよう。