(あら……?)
 離れに戻った私は、ある小さな変化に気がついた。
 建物の周辺がきれいになっていたのだ。
 慣れない離れでの暮らしの中で、室内を、何とか日常生活を送れるくらいに整えることに精いっぱいで、建物の外は全く手付かずの状態だった。
 ぼうぼうに生えていた雑草が、いくらか刈り取られている。
 そう言えば、さっきメアリの姿を見かけた。
 きっと、メアリがきれいにしてくれたのだろう。
 あの母が、私のことを心配してメアリを寄越すはずはないだろうから、メアリが自主的にやってくれたのだろう。
 私にもまだ気にかけてくれる人がいるのだと思ったら、少しうれしくなった。


 母に言った通り、私はカタリナと一緒に講義を受けることになった。
 カタリナが、どういう環境でどういう教育を受けてきたかは知らないが――酷い有様だった。
 聖女について専門的な知識がないのは仕方がないとして、教養やマナーがの酷さは呆れるばかりだった。
 特に私が我慢ならなかったのが食事の時だ。
 カタリナは、くちゃくちゃと派手に咀嚼音を立てながら食事をした。それだけでも十分不快なのに、食事が口に合わないと、露骨に不味そうな顔をする。
 聖女は要人と食事をする機会が多い。母が、カタリナに何をさせようとしているのかは知らないが、こんな状態のカタリナを人前に出すわけにはいかない。
 たとえ親しい関係の者だけと食事をするとしても、だ。
 だが、母がカタリナに注意しようとする素振りは見えなかった――私が同じことをしようものなら、すぐに注意してくるはずだ。