「――――それで、私に渡したいものとは?」


 感情に押し潰されてしまう前に、私は本題を切り出す。


「あのね、今日王宮でお菓子を戴いたの。ほら、とっても美味しそうでしょう? 一人じゃ食べきれないけど、皆に上げる量は無いから、レイと一緒に食べようと思って! レイだけ特別扱いしてるの見られたらマズイと思って、この時間まで待ってたんだ」


 そう言ってヘレナ様はニコニコと屈託なく笑う。涙が出そうだった。このままヘレナ様を抱き締めて、好きだと言えたら良いのに――――そう思いつつ、私は「ありがとうございます」と口にする。


「ううん、レイはいっつもわたしを甘やかしてくれるし、お世話になってるもの」

「――――――それだけですか?」


 言いながら、私はハッと口を噤んだ。ヘレナ様は「え?」と目を丸くして、私のことを見つめている。


「なっ……何でもありません。どうか忘れてください」


 本当はこんなこと、言うつもりはなかった。ヘレナ様が困るだけだと分かっているのに、ついつい欲が出たのだ。