「――――今度から、こういう時は私を頼ってください。聖女様の……いえ、お嬢様の願い事は、このレイが何でも叶えて差し上げます」


 そう言って私はヘレナ様の前に跪く。ヘレナ様は目を丸くし、しばらくの間、呆然とした表情のまま私のことを見つめていた。


「……そんなこと言っちゃって良いの? わたし、結構ワガママだよ? いっぱいいっぱい甘えて、レイに迷惑掛けちゃうかもしれないのに」

「もちろん。寧ろたくさん甘えてください。そのために私は存在します。それが私の望みなのですから」

「~~~~~~っ! だったらレイ、わたしのお願い事を聞いて! 
わたし、レイがお屋敷から居なくなっちゃうのは嫌だ! 他の場所に行っちゃうなんて嫌! どこにも行かないで、ずっとわたしの側に居てほしいの! ……ダメ?」


 ヘレナ様はそう言って、私の手をギュッと握った。涙を湛えた瞳がユラユラと揺れている。


(私が側に居ることがお嬢様の願い事)


 心が大きく震えた。


「お嬢様のお望みのままに。
このレイが一生、真心を込めてあなたにお仕えしましょう。何時でも、どんな場所でも、私が側に居ます。お嬢様の願いを叶えますから」


 微笑みながら、私はヘレナ様の手を握り返した。ヘレナ様はコクリと大きく頷き、私のことを抱き締める。この瞬間、私はヘレナ様のものになったのだと思う。胸が一杯で、涙が滲んだ。