「それは分かってるんだけど、ちゃんと形に残る方が良いなぁって思って。……ほら、一応わたしは聖女兼侯爵家の娘に戻れたわけだし、レイだって表には出さないけど、ストラスベストの第二王子っていう身分があるわけでしょう? 実態だけじゃなく、形式上も本当の夫婦になれるんじゃないかなぁって……」


 言いながら気恥ずかしさに襲われ、ヘレナの頬が真っ赤に染まっていく。


「もちろん。私は最初から、そのつもりでしたよ」


 そう言ってレイは、ヘレナの左手をそっと握る。見れば薬指に、綺麗なエメラルドの指輪が光っていた。リングの部分は金でできており、どちらもレイの瞳の色を彷彿とさせる。彼の独占欲を垣間見て、ヘレナは思わず微笑んだ。


「これから先も私はヘレナ様だけのものです。
我が主君、聖女であるお嬢様に永遠の忠誠を。
そして、一人の女性としてのヘレナ様に永遠の愛をここに誓います。

ですからヘレナ様――――ヘレナ様も、私のものになっていただけませんか?」


 レイはヘレナを見上げながら、泣きそうな表情で笑う。言葉では表せない程の幸福感がヘレナの胸を温める。ヘレナはコクリと頷いて「喜んで!」と答えたのだった。

【本編終】
※番外編が数話続きます!よろしくお願いします