「――――――何だかんだ言っても、レイは義理堅い人でしょう? もしもレイのお兄様が死んでしまったら、口ではあんなことを言っていても王位を継ぐと思うの。だけどそうなったら……わたしが困るから」


 ヘレナはそう言って、レイのことをギュッと抱き締める。


「だって、レイを独り占めできなくなるもの。――――レイはわたしのものなのに」


 その瞬間、レイの唇が大きく綺麗な弧を描く。レイはヘレナのことを抱き返すと、そっと顔を覗き込んだ。


「それは――――ヘレナ様からのプロポーズと捉えても宜しいですか?」


 レイの言葉にヘレナは唇を引き結ぶ。しばしの沈黙。どのぐらい経っただろう、ヘレナはやがてコクリと小さく頷いた。


「これから先どんなことがあっても、レイにはわたしの側に居て欲しい。わたしだけのレイで居て欲しい。だから――――――」


 ヘレナの言葉はそれ以上続かなかった。どちらともなく唇が重なり、二人はきつく抱き締め合う。どのぐらいそうしていただろうか。二人の唇がゆっくりと、名残惜し気に離れた。


「どんなことがあろうと側に居る――――そう約束させていただいた筈ですが」


 レイはそう言って微笑みつつ、ヘレナの頬に口付ける。