目まぐるしく日々が過ぎた。

 あの夜、ヘレナはレイと共にストラスベストを出国し、祖国の救済に向かった。
 神の怒りというのはどうやら本当に存在するらしく、ヘレナの帰国と共に、事態は急激に改善した。病に苦しんでいた人々も、怪我で苦しい思いをしていた人々も、見る見るうちに回復していく。全員を診るわけにはいかないので、ヘレナは神殿で必死に祈りを捧げた。泉にも足繁く通い、数日後には以前のような美しい水が戻って来た。


「ありがとう、ヘレナ! 君が居なかったらこの国は終わっていた。本当に……どれだけ感謝してもしきれない」


 国王は涙ながらにヘレナの帰還を喜んだ。ヘレナは穏やかに微笑みつつ、ゆっくりと頷く。彼女と共に城に呼ばれたマクレガー侯爵も誇らしげに胸を張った。


「それから――――――カルロスのことは、本当に申し訳なかった。あやつがあそこまで愚かなことに、私は気づくことが出来なかった。王位を継がせる前に気づけたことは、不幸中の幸いだが……」


 そう言って国王は深いため息を吐く。