「ふん――――国境近くの街だというから大して期待はしていなかったが、中々の場所じゃないか」


 カルロスは我が物顔で街を闊歩しつつ、満足そうに微笑んでいる。彼が連れてきた近衛騎士達は辟易しながらも「はぁ」と気のない返事をした。


「ここが我が領土になるのか――――悪くない。とはいえ、この程度の街ならば、俺達だけでも制圧できるかもしれないな! おまえもそう思うだろう?」

「いえ……流石にそれは無理があるかと」

「――――ノリが悪い奴め。
俺が王太子で居続けるには、この方法しかないんだぞ? 苦しんでいる民に新しく土地を与え、富を得る。大体父上は、神だの平和だの聖女といった訳の分からないものばかりを尊んでいるが、俺は違う。土地も富も人も武力も、奪わなければ手に入らない。そうしてどの国も繁栄してきたのだ。護るだけでは意味がないのだ」


 主人の言葉を聞きながら、騎士達は呆れてものも言えない。悪い夢なら覚まさせて欲しい――――この一ヶ月間、彼等はどれだけそう願っただろう。倫理観が欠けているだけでなく、状況すらまともに把握できない主人がため、自分達がどれ程肩身の狭い思いをしているか、カルロスには想像もつかないだろう。騎士たちがはぁ、と盛大なため息を吐いたその時だった。