「僕がレイモンド様を見間違えるわけがないじゃありませんか? そんな人並み外れたやっばい容姿しといて『別人です』が通るわけないでしょう? それに――――」


 ほら、と言って男性は、レイの前髪をぐいっと掻き上げる。右目を隠している方の前髪だ。中から現れたのはエメラルドみたいに綺麗なレイの瞳――――ではなく、アンバーのような色合いをした、左目とはまた別の美しさを誇る瞳だった。


「これで言い逃れはできませんよ? こんな珍しい瞳しといて、別人なわけがないじゃないですか! いい加減認めてくださいよ~~」


 嬉しそうな男性とは対照的に、レイは何だか面倒くさそうな表情をしている。最早返事をするのも煩わしいといった雰囲気だ。


(だけどこの人、このままいくとずっとこの調子だろうし)

「ねぇ、レイ。お屋敷にお招きして、お茶でも飲んでいただいたら? 事情はよく分からないけど、久しぶりにお会いしたんでしょう? 出来たらわたしも、レイのことを教えていただきたいし」


 レイにだけ聞こえるような小声でヘレナがそう提案すると、男性は「是非是非!」と言いつつ
飛び上がる。どうやら相当耳が良いらしい。


「――――――お嬢様がそう仰るなら」


 そう口にしつつ、レイは小さくため息を吐いた。