「レイモンド様! ……やっぱりそうだ! 間違いない!」


 赤髪の騎士は叫びつつ、レイとヘレナに向かって走り出した。レイはヘレナを隠すようにして前に立ち、キッと騎士のことを睨みつける。


「良かった……やっぱり生きていらっしゃったんですね!」


 人懐っこい笑みを浮かべ、騎士は手足をバタつかせる。レイは小さく首を傾げながら、キラキラしい余所行きの笑顔を浮かべた。


「申し訳ございませんが、人違いでしょう。私は『レイモンド』という名前ではございませんし、あなたのことも存じ上げませんから。
さぁ、お嬢様。そろそろお屋敷に帰りましょうか。今晩はお嬢様が好きなシチューをご用意しております」


 そう言ってレイは、ヘレナに向かって微笑みかける。あっという間に執事スイッチが入ったらしい。先程までヘレナの名前を呼んでいた癖に、もう『お嬢様』呼びに切り替わっている。


(何か、わたしの名前を聞かせたくない事情でもあるのかしら?)


 普段、街では敢えてラフな印象を醸し出しているレイなのに、今の彼はきちきちっとした執事っぷりを見せつけている。
 けれど、赤髪の騎士は「そりゃ無いですよ~~!」と口にして、ひしとレイに縋りついた。