(どうしよう……どうしよう、どうしよう)


 レイに手を引かれつつ、ヘレナは半ばパニックに陥っていた。彼の足は、教会とは別の方角へ向かっている。どこへ向かっているのかは分からないが、ヘレナは黙ってレイの後に付いて行くことしかできない。


(あんなこと、言うつもりじゃなかったのに)


 考えながら、胸がバクバクと鳴り響く。

 レイはヘレナのものじゃない――――今までずっと、自分にそう言い聞かせてきた。どんなに特別扱いされても、思い上がってはいけない。独り占めしたいだなんて思って良い筈がない。
 けれど、レイに甘やかされる度、大切にされていると実感する度に、それらの想いは沸々と浮かび上がってくる。『望んでも良い』のだと勘違いしたくなる。ストラスベストに追放されて以降、その傾向が極端に強くなったため、ヘレナは必死に自分を律してきたのだ。


(カルロス様のおっしゃる通り、やっぱりわたしは聖女なんかじゃ無かったんだわ)


 涙をポロポロ流しつつ、ヘレナはぐっと下を向く。こんな利己的な想いを抱く人間が、聖女である筈がない。そう思うと、情けなくて堪らなかった。