高嶺の寺子さんは、銀髪の先輩に溺れることにした


 翌日、本当に小説の事は誰も知らなかった。

 安心して半日を過ごし、迎えたお昼休み。

 今日は職員会議のため、あと2時間もすれば帰れる。
 
 早帰りって、幾つになっても嬉しいものだ。

「莉子!  売店行ってくるから、先に屋上行ってて」

 彼女は、小学校からの幼馴染みで親友の長谷田未央(はせだみお)

 バレー部キャプテンのスポーツマンだ。

 ボーイッシュな見た目と逞しい性格で、多くの女子生徒ファンがいる。

 もっと言ってしまえば、男子よりモテるのだ。

「了解」

 私はお弁当を持って屋上に向かうため、教室を出た。

 すると
 
「莉子」

 廊下に出た瞬間、聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。

 声の主を思い出すより先に、昨日の先輩が目の前に登場してきたのだ。

「…どうも」

「今、時間ある?」

「ないです」

「あるよね」

「これから友達とご飯を食べるんです。だから、本当にありません」

「なんだ、友達いたのかよ。それなら、帰り玄関で待ってて」

「失礼ですね。私にも友達はいます!」

 まぁ、1人だけだけどね。