「加子は、本当に世渡り上手よね」 「うん。時々だけど、あの身軽さが羨ましくなるよ」 「莉子ちゃんも自由なのよ、本当は」 「私も自由?」 「そうよ。あとは、貴方を連れ出してくれる人が現れてくれればね」 母はお茶目にウィンクをして見せると、皿を洗い始めた。 今の言葉、どういう意味なのだろうか。 今日はやたらと、難しい台詞が飛び交った一日だ。 私は布巾で皿を拭きながら、頭をひねらせたのだった。