軽く、私の手を握り返してくれた久保田さんは、そのまま押し抱くように、握られたふたつの手のひらを自分のおでこに当てた。


まるでそれは、映画のワンシーンのようだけれど、現実味がある。


夢を見ているみたいだけれど、目の前の久保田さんは、今、ここにいてくれる。


その事実だけでいい、と思う。


「よろしく、ね。蒼ちゃん」


握られたままの手のひらが、嬉しい。


「はい。こちらこそ」


返事を返して、微笑んだ。


今は、知らないことだらけでも、少しずつでいいと思える。


久保田さんといっしょ、なら。