帰宅ラッシュの波に乗って、ぎゅーぎゅー詰めの電車に乗り込む。



間もなく来た、お尻の辺りの感触に閉口する。



そうだ。今日は冷たい雨が降っていたし。


ひとが重なるようにひしめき合っている電車内で、たまたま持っている傘の柄が当たっているのかも知れない。



折り重なるように詰め込まれたこの空間では、他の誰かのパンプスのヒールが、心もとない足先にめり込むことだってあるだろう。


悪意のない悪意がいちばん、悪質だとは思うけれど。


知らないあいだに。


私だって誰かを傷つけているかもしれない。



そんな毎日だって。


あのおだやかな笑顔さえあれば、私はどんなことだって超えてゆける。


思ったら、息がしずらいこの空間でも、ちいさく笑っている。