ダブルブルー

「…い、いやいや!こんな大俳優さんが、こんな一般人に『またね』なんて、あるわけないじゃないですか」


声を押さえて、ひそひそと喋る私に。


「なんで?オレ、嘘つかないよ?それに、『大俳優』って」


ふふふ。


また、穏やかに笑う久保田さんを見つめた。


「蒼ちゃんは、『会社員』だけど、仕事が終わったら、『ひとりの人間』でしょ?オレも仕事中は『俳優』だけど、仕事が終わったら、『ひとりの人間』」


ね?一緒でしょ?


少し上がった、帽子のつばからあの、柔らかな瞳がイタズラっぽく私を見つめている。