ダブルブルー

「…ちょっと、ちょっと待って…!」


急に後ろから掛けられた声は、瞬時に振り向くのには充分な甘い声で。


「…きゃ…?!」


「…わ、ご、ごめん…!距離、間違った!」


瞬時に振り返ったら、思いのほか近づいていた距離に、体同士がぶつかってしまう。


よろけた私の腕を、柔らかく掴んだのは…、


「…久保田さん!」


「あ、バレてた?」


相変わらず、目深に被られた帽子。


でもその声は、優しさを纏っている。


なぜだか急に上がった自分自身の体温に、戸惑う。


「大丈夫?」


私を下から、覗き込もうとする久保田さんの気配に、


「…や、ちょっと、見ないで、ください…」


赤い顔を見られたくなくて、咄嗟にその場にしゃがみこんだ。