テレビの音を聞き流しながら、コーヒーを淹れる。


ちいさな部屋に、香ばしいコーヒーの薫りが充満していく。


大きく深呼吸をしたら、シアワセな薫りが肺を満たした。


『それでは、今回の映画に主演されている、久保田さんにお話を伺いたいと思います。今回の映画のテーマは『一世一代の恋』だということですが』


「はい。このひとが最後になるだろうという、不思議な予感に導かれる主人公を演じています」



テレビから聞こえてきた穏やかな声に、瞬時に顔を上げる。


急いでテレビの前に駆けつける。


「…ウソだ…」


『今日は、久保田 青さんにお話を伺いました。ありがとうございました』


「ありがとうございました」



…ウソ、だ…、


もう一度、呟いた。