気付くと俺は、ジャージの上にコートを羽織り、足元はクロックスという格好でマンションの自分の部屋から飛び出していた。


何度も何度も転びそうになりながら懸命に走る。


息が上がる。


完璧な運動不足。


俺の格好を見て、周りの者がこちらをジロジロ見ていく。


でも、そんな事はそうでも良かった。


彼女を助けたくて必死だった。


自分でもよくわからない感情。


昨日、あれだけ鬱陶しく変な女まで思っていたのに。


でも今は……。


今は……。


スマホを確認しながら走り続ける。


周りの騒めきも何も聞こえない。


ただ、耳に響くのは自分の息遣いだけ。


まだ説得は続いてるみたいだ。


頼む、頼むからそのままそこにいてくれ。


俺が行くまで。


その場に辿り着いたとき時には、野次馬、警察、消防、マスコミと周りは騒然としていた。


keepoutと書かれた黄色いテープが張られ、それを乗り越えようとした時、警官に止められた。



「人の命がかかってんだよ!このまま飛び降りるのを指咥えて見てろって言うのかよ!」



制止する警官に向かってそう叫んだ。



「ご家族の方ですか?」


「そ、そうだよ!」



警官にそう聞かれて、思わず言葉を発していた。