能ある彼女は敏腕社長に捕獲される

自分は自分、他人は他人、うちはうち、よそはよそ。

私の性格が所詮は他人事ですからと言うのもあったのかも知れないし、兄がいたからと言うのもあったからかも知れない。

あまり言うことではないと思うけれど…自分の中で見限っていた部分もあったから、父を置いて家を出ていくことができた。

でも彼女は母と姉が出て行ってしまって、自分まで出て行ったら父が1人になってしまうと言うその気持ちから家を出ることができないでいる。

もし…私もどこかで道が違っていたら、彼女のように父や家にとらわれてしまっていたかも知れない。

だったら…何としてでもいいから、それこそどんな手を使ってでもいいから、彼女を救い出さなければ。

私は目を閉じて自分の気持ちを落ち着かせると、目を開けて彼女を視界に入れた。

「ーーあの!」

声をかけた私に彼女は顔をあげた。